脳内感覚が昔に引き戻されてしまうと色々と思い出すもので、今日は昔、週末の夜を遊び回っていた頃の事を考えていたりしました。遊び回っていたと言っても、友人に誘われた時にしか行ってなかったのでそれほど頻繁ではなかったのですが、僕にしては珍しく結構鮮明に記憶が残っているのです。胃液を戻しそうになるくらいに腹を打ってくるベースのうねりや、怪しく光る金属の禍々しさや、体臭の甘さや、香水の匂いが満たすいかがわしさや、闇の中を踊るような煙草の灯りや、爆音から逃れるように店の外へ出た時の夜の温度と深さや、二の腕や指先のひんやりとした冷たさや、余りにも白々しく暴力的な朝日。それらを懐かしく感じています。

 年に一二度こういう事を思い出しては、ウェブに書いたり書かなかったりしている気がします。かと言ってそれで昔を思い出し、夜の街へ繰り出すような事はなく、ただ思い出して懐かしんでいるだけ。年齢層の高いクラブもあったりするらしいですが、何かが抜け落ちた身体が集まっているだけのような気がして食指が動きません。僕は単に、言ってしまえばその当時の僕がその当時のその場所にもっと居たかったなあ、と後悔しているに過ぎないのですから。今更それを取り戻せるとは露ほども思っていないし、今の方が楽しい。

 ラフォーレで催されたクラブイベントに行った時に、一目で気に入った女の子が居て、フロアが広かった割りには度々顔を合わせて、これはもう声をかけるしかないと思いつつも、結局声をかけられなくて軽い失意と共に朝を迎えたという淡い思い出があるのです。いや、そういう事は茶飯事であったりしたのですが、その女の子とは一月後、渋谷のセンター街で偶然擦れ違いました。僕は独りで、その子は男の連れが居ました。クラブ内の暗い照明と晴れた日の光の元とでは確認条件が違い過ますが、特徴のある顔立ちだったので間違ってはいないでしょう。振り返りたい衝動を抑えつつ、僕は真っ直ぐに歩き続けました。その後僕がどうしたかは全く覚えていません。

 そんな事を思い出しながら今現在酒呑んで酔っています。仕事は順調です。