元々、谷崎潤一郎氏の原作を好きで読んでいたせいか、原作との差が気になってしまって楽しめなかった部分があり、ちょいと残念。原作は上・中・下巻在る長い物語なのですが、それを二時間程度に切り詰めているのでテンポがやや早すぎる感じがするし、原作が感情の振り幅の少ない質感(僕はこの部分が気に入っている)を持っているのに対し、この映画の方はやや叙情的である。そして何より僕が気になってしまうのは雪子役が吉永小百合嬢であるという事。原作の線が細く神経質な面持ち、という印象をどうしても重ねる事が出来ない。この映画で細雪が映画化されるのが三作目という事だが、他の二作が気になるところ。
さて、くどくどと文句を並べましたが、基本的にこの映画好きです。映像が美しいのです。京都の零れんばかりに咲き乱れる桜や、階上の料亭の部屋に斜めに低く差し込む陽射しの柔らかさ、四姉妹の身につける着物の艶やかな色彩とか、彼女達の絶妙な表情とか。あ、それと石坂浩二氏の妙に調子の良いキャラクターが気に入りました。
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