DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Free ENKA

 先週末に放映された「湯けむりスナイパー」の中で、谷桃子扮する芸者小雪がカラオケにて ” ここにいるよ ” を歌い、それを遠藤憲一扮する主人公が聴いて「これは、21世紀の演歌だ」と嘆き涙を流すという場面があったのだけれど、それを観て僕は何か腑に落ちるものがあった。2年前にラジオから繰り返し流れてくる上記の曲を聴きながら、こんなにも湿っぽい内容の歌詞を僕よりもずっと若い人達が楽曲としてまとめて発表し、そしてそれが世間で売れているという事実が少し不思議に思えたのだ。それは恐らく僕の若い人達に対する偏見からくるもので、若い人達はおしなべて皆ドライな感覚で生きていると思っていたようなのである。しかし実際はそうでもないらしい。

 21世紀の演歌。もしかすると演歌的なものは昔からずっと、綿綿と受け継がれているのではないだろうか。音楽のジャンルとしてではなく、演ずる側聴く側双方の感覚的なジャンルとして。そう考えていると色々と思い当たる。この曲は何だか演歌っぽいなあ、という感じで。明確な基準はなく、飽くまで漠然とした感覚で。そういう曲を集めて繋いでみた。新しい曲ばかりだと解りづらいので古い曲も織り交ぜて。

Free ENKA from doggylife on 8tracks Radio.

 Wikipedia – 演歌を読んでみると冒頭に「演歌(えんか)とは、日本の大衆音楽のジャンルのひとつであり、日本人独特の感覚や情念にもとづく娯楽的な歌曲の分類であるとされている。」と書かれてある。まあそういう分類なんだろうなあ。しかし「情念」とは強い言葉を使ったものだ。その言葉を当てはめると定義が結構明確になる気がする。その他には音階や歌唱法によって特徴付けられているようである。今回色々と聴いていて思ったのだけれど、こんなにも素晴らしい歌唱力・表現力を持つ歌い手達の受け皿が無くなるのは勿体ない。最近は少し盛り返しているようだけれど、演歌というジャンルが衰退して久しい。大瀧詠一松本隆が楽曲を提供し森進一が歌った「冬のリヴィエラ」とか、福山雅治が楽曲を提供し前川清が歌った「ひまわり」とか、杉真理が曲を書いて石川さゆりが歌った「ウィスキーが、お好きでしょ」とか、そんな感じに混交していけば良いのになあ。先日、くるりが企画して毎年催される京都音楽博覧会に石川さゆりが出演する事が発表されたが、一体どういう事になるのやら判らないけれど、何だか楽しい気分にさせてくれる話である。

 で、音楽とは関係ない話なのだけれど、石川さゆりって昔っから結構好きである。実家に帰省した際に両親が「演歌の花道」なんかを観ていると、出演の是非を確認せずにはいられない。

 ★

 そう言えば、上の「湯けむりスナイパー」のカラオケでのエピソードは原作にもあるのかと思って調べたらそうではないようで、原作では椎名林檎の曲みたいだ。どの曲かまで判らないが台詞は「これは、女の殺し屋の歌だ!」で。脚本・演出の大根仁ブログに原作のエピソードが書いてあった。

2 Comments

  1. なんか拍手喝采っていうか、モニタ前で「ぉぉ…」とかうなっちゃったんですけど(笑) doggylifeさんがENKAと呼んだところのものを、わたしは「ソウル系」とか「ブルース」とか呼んで、すり替えてたことに気づきました。 やっぱENKAですよ、ええ。はっきりわかりました。上記事内の曲もいちいちつぼだったのも、ENKAだったからなのですね。そうして中島みゆきもENKAなのですね。前川清への提供曲「涙」あたり。  http://www.youtube.com/watc… こういう曲が流れる店とか、シチュエーションは、なかなか昨今、どこにあるのかわかんないですけど。

  2.  ご賛同戴き有難う御座います。ブルースもソウルも動機としては同じ様なものでしょうが、立ち上る匂いが違うと思います。なんだったら、日本語で歌われるウエットな歌はすべからく「演歌」で良いんじゃないかと思うのですが、伝統的な楽曲との差違をどうしても設けなければならないのだとしたら「ニュー演歌」だとか「総合演歌」だとか、Free Soul に習って「 Free Enka 」にしたら良いんじゃないかと考えます。
     前川清「涙」。「男運は悪くなかった。あんないい人いやしないもの」が泣かせます。女歌を歌わせたら前川清は天下一品ですな。
     しかしそれより凄いのは中島みゆき提供で研ナオコが歌う演歌。「かもめはかもめ」もそうですが、今回は繋ぎが巧くいかずに外した「あばよ」は凄まじい。女の歌う恨み節はこれより上はないと思います。

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