このように、商店街が衰退しシャッター街になっていく風景は、地方の若者たちにとって、それまで盤石に思えていた「地域に残って生活し続ける」という将来に対する予期を揺さぶるものだっただろう。つまり「嫌でもここに残っていれば親世代と同じように安定した仕事にはありつける」という前提自体が崩れ去ったのである。しかしそれ以上に、地域社会の顔であった商店主たちが市場経済のなかでプライドを傷つけられ、惨めに散っていくさまは、強いからこそ反発のしがいがあった彼らにとっての「大人の世界」の強固な安定性をはげしく揺さぶるものであった。

阿部真大著『地方にこもる若者たち〜都会と田舎の間に出現した新しい社会〜』朝日新書 2013年 p.123