80年代に猛威をふるった管理教育は、90年代以降、見直しが進められた。ふたたび国立国会図書館の資料を「管理教育」で検索すると、90年代以降、その見直しに関する記事が目につくようになる。

 (中略)

 事実、90年代に入って、80年代に見られたような露骨な管理教育はなりをひそめはじめる。管理教育という「鉄の檻」がなくなっていくことは、若者たちにとっては「大人たち」からの「解放」を意味した(その流れはその後、「ゆとり教育」へとつながっていく)。
 しかし一方で、そのことはそれまで強固であった「大人の世界」の揺らぎをも意味していた。92年の論文で辻創は学校における「自由放任」の問題を指摘し、後に社会問題化する管理教育の見直しがもたらす「学級崩壊」の弊害について論じている。それはまさしく若者がみずからを抑圧してくる「大人」という「敵」を失った瞬間でもあった。

阿部真大著『地方にこもる若者たち〜都会と田舎の間に出現した新しい社会〜』朝日新書 2013年 pp.119-121