そもそも、フーゾクは売春のようなものなのに、なぜ取り締まらないのか? と思っている人もいるだろう。実は、ヘルスなどは本番(性交渉そのもの)が行われていない(ということになっている)ため、売買春の法律上の定義から外れるし、ソープランドであれば入浴までが店の提供するサービスで、そこから先は「客とソープ嬢の間の個人的な取引である」という建前によって「フーゾク≠売買春」という解釈が成立しているのだ。
売春は、管理者(経営者)が働く者(売春婦)を管理下において組織的に行う「管理売春」と売春婦が自ら相手を見つけて売買春取引を行う「単純売春」に分類される。日本では売春のすべてが禁止されているわけではない。日本で禁じられれいるのは、管理売春と公衆の目に触れる方法による売春勧誘(立ちんぼ型の単純売春)だ。日本以外の多くの国においても、これはだいだい同じ。
だって個人間で性交渉の前後に金品の授受があったってだけで捕まえていたら、解釈を拡大していけば、恋人間のプレゼントでさえ取り締まることができてしまう。売春を取り締まるべきか否かの議論は別にして、すべての売買春を禁止するのはどだい不可能なのだ。
荻上チキ・飯田泰之著『夜の経済学』扶桑社 2013年 p.68
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