一般に実学というと、人間の社会生活に役立つ実用的科学技術の学問のことを指すが、これは後世のことで、本来は人倫道徳およびその体得実践の学にあった。
実学ということがやかましくいわれたのは、宋代からで、老荘や仏教に対して儒学を実学といい、老荘仏教の学は無用の学、すなわち虚学としてこれを退けた。
もともと実学は道徳哲学、人生哲学と一体のもので、しかもこれを根本としなければならない、として両者の間に本末緩急の別が考えられたのである。だから実学は道義的精神の発揚でなければならなかった。このことは朱子の全体大用論によく示されている。
朝日新聞福岡本部編『博多町人と学者の森〜はかた学6〜』葦書房 1996年 p.70
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