銀行も株式を大量に保有していますから、株価が下がると、預金の払い戻しに応じることができなくなる可能性があります。二〇〇四年現在、普通預金は一人一行一〇〇〇万円とその利子までしか保証されていません。二〇〇五年四月からは普通預金と定期預金との区別はなくなり、預金は一人一行当たり一〇〇〇万円とその利子までしか保証されなくなりました。
 大量の不良債権を抱えた銀行が保有株式の下落によって債務超過(銀行が保有している資産よりも預金などの負債の額が大きくなること)に陥れば、預金のうち一〇〇〇万円を越える分については、払い戻しされなくなるリスクがあります。さらに、二〇〇四年三月まで普通預金が全額保護されているといっても、それを保護するためのおカネは税金です。預金者の多くは同時に納税者ですから、預金者は税金を納めて自分の預金を守っているにすぎないのです。

岩田規久男著『日本経済にいま何が起きているのか』東洋経済新聞社 2005年 pp.29-30