第1章で、高速道路の混雑を解消する手段として、高速道路料金の引き上げが有効であること、そして引き上げた料金で高速道路を拡幅したり、新しい高速道路をつくることが有効であることを述べた。実は、高速道路で渋滞が起きる現象も市場の失敗の例である。つまり、高速道路の料金が低過ぎるために、高速道路のサービス供給能力に対して利用量が過大になるのである。道路の渋滞によって利用者はお互いに速度の低下という不利益を与え合う。この不利益は外部不経済に伴う費用に他ならない。ところが、高速道路の利用者は自らが利用することによって他の自動車の速度が遅くなるということ、つまり、他の車の利用者に及ぼす外部不経済を考慮して行動しない。そのために、道路の渋滞が起きるのである。この問題を解決するには、一台の自動車が走る時に他の自動車の速度が落ちるという外部不経済を考慮した上で、高速道路の料金を決めることである。

岩田規久男著『経済学を学ぶ』ちくま新書 1994年 pp.158-159