ピカソ問題とは、結論的にいえば、今ではある程度分析されていて日本の受験予備校などのトレーニングによってみんな絵が上手くなってしまった、ということにつながります。
 天才=絵が上手いということであるならば、絵が上手いということがインフレーションを起こしているので価値が下落している。だから、現代美術では、コンセプトということが非常に重要になってきている。ピカソ以降の時代の始まりです。
「ピカソ以降が現代美術」というのはそういうことです。絵画の実験では、ピカソがやはり直接的な描法、対象、例えば、女なら女がいてそれを画布に描く場合のメッセージ性は、芸術家のための芸術としてはもう完結してしまっていて発展がない。デッドエンド、クライマックスです。

 (中略)

 そこからは、さきほども述べたとおり、芸術と社会との接点がどんどん大きくなって、経済だったり流通だったり、絵を描く理由であったり人種であったり、世界が小さくなって情報社会の到来であったり、芸術家が考えなくてはいけないことが多くなってしまったわけです。

村上隆著『芸術闘争論』幻冬舎 2010年 pp.51-52