人のできることを極めたお金持ちが「人を超えたい」と願うのは自然のなりゆきです。過去の超人を探索してゆく中で「天才の見た風景」を見たくなるのも、当然の欲求です。天才の痕跡を目前にすることで、現実の限界を突破するヒントも手に入れたいと願う気持ちには切実なものがあります。成功した人が芸術やスポーツに走るのは超人願望関係しているのです。
(中略)
壊れた世界で命を燃やさなければいけないお金持ちの「物足りなさ」が芸術に向かいますから、金銭ですべて解決してきたはずの富裕者の見えない欲望を確認するかのように、精神異常者の作品や性的虐待を含む作品が求められる時もあります。
村上隆著『芸術起業論』幻冬舎 2006年 p.55
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