ずっと以前にこの映画を観た時にはつまらなく感じて、それ以来思い出す事もなかったのだが、最近になって時々思い出すようになった。何を思い出していたのかというと、劇中に出てくる1970年代の東京の風景や柳川の風景である。あれは割と良かったなあ、と思っていたのである。それで今日になって、気になってどうにもならなくなったので再度観てみた。
驚くほどにどの光景(風景に限らず美術も)も僕の気に入った。室内の美術にしても、昭和中期にモダンと呼ばれたであろう雰囲気で好きだ。線路脇の路地や階段坂など、僕が最近急激に興味を持ち始めたモチーフが散りばめられている。もしかしてこういう映像を撮りたくてこの映画を撮ったのだろうか。これらの絵を映像資料として欲しくなった。
主軸となる物語は以前観た時と印象は変わらず。アンバランスな会話は端々で不安をかき立て、奇妙な緊張感で劇を覆ってしまう。たまに耳を塞ぎたくなる。「見ないで欲しいの。私の事、そんなに。」そう言えば、最初に観た時はこのコピーが気になって観たのだった。今でも気になると言えば気になる。
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