このところ、フィルムカメラでまともに撮り始めた1999年の秋からこっちの写真をスキャンしてみたりしている。風景ばかりで人が写っている事は少ないが、時期と場所が判れば、その時独りであったのか、それとも誰かと一緒だったのかだいたいは思い出せる。しかし中には、何時何処で撮った写真なのか全然判らないものもあったりして、それはそれで面白い。
 1999年〜2001年の春までの写真は、未だ全然ネガの整理をしようなどという考え(まさか写真をずっと撮り続けるとは思っていなかったので)はなく、袋の中に溜まりに溜まったネガを、適当に掴んだ先からフォルダに収めるような事をしているので、ネガに日付を写しこんでいる写真以外は、本当に大凡の時期しか判らない。しかもそれは日常ではない特別な場所が写っているとか、雪が積もっているとか桜が咲いているとか、誰と一緒に居たとか、そういう記号が無ければ判断がつかない。

 さて、こういう事をしているからといって特に懐かしいという感情は湧かない。色々な事を思い出しはするが、ただそれだけ。良い事もあれば嫌な事もある。嫌な思い出が写りこんでいるネガなどスキャンしない。更に風化するまで封印するのである。何となく自分の略歴を眺めるようなこの作業は、基本的に楽しい。昔読んだ本の頁を開いたり、昔聴いていたレコードに針を落としたりするのにも似ている。つまり目慣れた光景が再生されるのだ。違う点は、それが極個人的な光景でしかないという事。暫くは続けてみようと思う。現在の写真を撮る事より楽しい気がする。少なくとも今この瞬間は。