毎度の事ですが、ストーリーは追いません。この映画は、もうとにかくマヌーシュ・スウィングです。詳しくは後で書きますが、フランス北部に居住する英語圏でいうジプシーの呼称がマヌーシュです。そこで生まれたスウィング、それがマヌーシュ・スウィングです。その演奏が本当に素晴らしい。観ていて気が付いたのですが、スウィングってお互いの技量やセンスに対する信頼から生まれるんじゃないかと思うのです。ほら!どうだ!良い感じだろ? 次はお前の番だ。気持ちの良い音を頼むぜ。よし!そう!最高だ!よしきた、今度は俺の番だ!というこういう感覚がスウィングじゃないかなあ、と思ったりする訳です。そう考えるとジャンルや奏法なんて関係ない気がして来ます。指揮者に統制されたクラシックなどは無理な気がしますが、在る程度、個人のインプロビゼイションが許された状況であれば、何でも良いのです。それは別に音楽に限った事ではありません。枠組みが大きくなりますが、ルーティンワークでない仕事でもあり得るかも知れません。スポーツでも、セックスでもそうかも知れません。目的はただ一つ。お互いの創意工夫の先にどれだけの心地良さを獲得出来るか。それに尽きるように思えます。それがとても難しい事は周知の通りです。

 話が飛び過ぎたようですが、まあ、そんな事を考えていた訳です。何となくスウィングってグルーヴと似てるな。そう思います。違うような気も気もしますが、やはり似てる。
 んで、欧州各地でのジプシーの呼称は以下のようです。

英語圏ではジプシー、ドイツではシンティやツィゴイネル、フランスではマヌーシュやジタン、スペインではヒターノ、イタリアではツィガーノ、そして東欧からバルカンではロムと呼ばれている。

 余談ですが、Gitan と言う煙草がありますね。昔僕は好きで吸ってました。友人にも一人、あと大学の先輩に一人吸っている人が居ましたが、それ以外(禁煙者はおろか喫煙者にまで)の人達には嫌がられてましたね。牧草みたいな匂いがして良いのに。それから、この映画の中にも度々登場しますが、マヌーシュ・スウィングの生みの親、Django Reinhardt 。彼のスウィング奏法の出で立ちに朧気な記憶があったので、改めて調べてみました。

この奏法の創始者は故ジャンゴ・ラインハルト氏。もちろん、生粋のマヌーシュ。18才のころ、幌馬車の火事で左手の薬指、小指を失い、その後数年かけ、左三本指で押さえる独特の奏法を編み出した。

 マヌーシュ・スウィングとは、指を失ってもなお音楽を諦めなかった人が作り上げた、超絶の技術なのでした。
 あ、もう一つ。ギターを抱えて走る少年の姿は、とても美しかった。