これも娼婦絡みの映画。どうしてそんな映画ばかり観るのか、とか聞いてはいけない。僕だって高校球児の爽やかな涙を見遣りながらコレ書いていて、自分が少し心配になっていたりするのだから。・・・さてこの映画、前述の「歓楽通り」とは少し違う。いやだいぶ違う。主人公はヤクザの男。街で見かけた女子大生に一目惚れをしてしまうが、鼻も引っかけて貰えない。考えた男は女を罠にかけ、自分が面倒を見ている売春宿に身売りさせるのである。そうやって女を身近に置く事に成功する男だが、彼の苦悩はそこから始まる。初めて客を取らされ泣き叫ぶ女を目の当たりにして、居ても立っても居られずに客を叩き出したり、女に暴力を奮おうとする客を袋叩きにしたりするが、女を売春婦にしてしまったのは自分である。何れ女は客を取る事になる。客に買われ、子分にまで買われる女を男は見つめ続ける。たった一言の言葉も発せずに。
実はこの主人公、全然喋らない。唯一、一場面だけ喋る。その台詞はこの映画の根底に流れる、男の思いを吐き出すものであるが、それさえギドク監督はもまともには喋らせない。簡単には感動なんかさせては貰えないのである。そんなところが私はいたく気に入りました。それと、ジャケット画像にもあるような売春宿の毒々しい原色の照明が美しく、さすが韓国人は原色の使い方が巧いなあ、とか思いました。これのポスターとか無いかな。劇中でエゴン・シーレの画集が突然登場するので何かと思えば、ギドク監督はパリで絵を描いて暮らしていた事があるそうな。
SPO Entertainment によるキム・ギドク監督のサイトSeochon.net による主人公役のチョ・ジェヒョンのページ
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