DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Tag: novel (page 2 of 2)

パレード / 吉田 修一

 この小説、マンションの2LDKの部屋に同居する5人の男女の物語です。各章、それぞれの視点で語られていく訳ですが、よくあるパラレルな構成ではありません。話は順番に、数珠繋ぎに進んでいきます。珍しい構成だなあ、と思いつつも今朝電車の中で読んでいる時までは、文体や会話が大変面白くて、それを楽しむように読んでいました。しかし、がしかし、それだけではなかったのです。丁度帰りの電車の中で読み終えるタイミングで、各登場人物がそれぞれの内情を吐露しつつ、何事も無かったようにこの小説は終わるんだろうなぐらいに思っていましたが、それは私の軽率な考えに過ぎませんでした。最終章の終わりに、もの凄いテンションまで持ち上げられ唐突に終わりを告げられます。そういう事だったのか! 私は最後の最後まで気付く事が出来ませんでした。良く出来た小説です。レイモンド・チャンドラーの ” 長いお別れ ” よりも、それまでがほのぼのとしていただけにショックが大きい。やられました。

Missing / 本多 孝好

 ずっと以前から書店に平積みされ、彼方此方の書店で薦められているのは知っていましたが、やたらと薦められるとウザったく思うし、表紙のデザインが喜多嶋隆っぽいので敬遠していました。しかしとうとう一昨日くらいにイトーヨーカ堂に入っている本屋で手に取りました。此処で紹介しているのは単行本ですが、僕が買ったのは文庫本です。Amazon には文庫本の画像しか用意されていなかったので、仕方なく文庫本の情報を使用しているに過ぎません。新刊でもないのに単行本は買いませんよ。物として所有したい場合は別ですが。

 この本は短編集です。ミステリ仕立てなので、最後にそれぞれの事件の真相みたいなモノが主人公の口から巧妙に語られますが、これまでの古来(私が読んだミステリ物のこれまで)のミステリのように、複雑に絡む事情の糸を解きほぐすような解釈の仕方ではなく、残酷なまでに当事者の感情に迫る訳です。本当はどうしたかったのか? どうして欲しかったのか? 容赦ないです。人の持つ欲求(希求と混同した)の深淵をちょっとだけ覗き見てみたい人にはお薦め。

追記:単行本は表紙デザインは喜多嶋隆っぽくはありません。ぽいのは文庫本。

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