DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Tag: art (page 17 of 18)

 「もの派」は、作品を見ていると一見簡単そうに見える。ところがその背景たるアーティストの作品説明を読むと、難解で、理解するのに読解力、理解力と時間を要する。ちょっと引き抜こうとした野の花の根が意外に複雑で長く、力んでも抜けないような感じだ。
 難しいから悪いとは言わないけれども、「もの派」の登場が一般的な「現代アートって難しい」のイメージを確立してしまったのではないかと思う。作品は非常に魅力的なのだが、解説とその作品のコンセプトに大量の意味を入れ込んだために、当たり前の作品の面白さが、観客の手から遠くに行ってしまったように感じる。

山口裕美著『現代アートの入門の入門』光文社新書 2002年 p.95

 十数年前、パリのジュドポーム美術館で小学校低学年の課外授業の一団と一緒になったことがある。お人形のように愛らしい子供達だったので、注目してしばらく見ていた。ジャン・デュビュッフェの作品の前に座って先生は話しだした。その時、以外だったことは、引率の先生はほとんど説明らしいことは言わなかったことだ。むしろ逆に質問を子供達に投げかけていた。そうすると子供達は勝手なことを口々に言う。その様子がまたかわいい。
 「顔が恐い」とか「あの人は笑っている」だとか、騒ぐのではなく、感想を言い合うことを美術館を許していた。その光景を見ていて、私はつくづく日本の美術館もこういうことが出来ればどれだけ楽しい空間になるだろう、と思ったものだ。現代アート作品はコミュニケーションのための道具であると思う。だから意見や感想の違う人とディスカッションすることも現代アートの面白さの一つである。

山口裕美著『現代アートの入門の入門』光文社新書 2002年 p.83

 レントゲンクンストラウム(当時)、小山登美夫ギャラリー、オオタファインアート、ハヤカワマサタカギャラリー、ワコウワークスオブアート、ギャラリー小柳、佐谷画廊(当時、現在は SHUGO ARTS)、タカイシイギャラリー、ギャラリー360°の九つのギャラリストが集まって、九十八年、九十九年に青山のスパイラルで「G9 ニューダイレクション」という名前のアートフェアを行った。このことがきっかけで、これらのギャラリーやそのギャラリーで取り扱うアーティストを「G9系」と呼ぶことが多くなった。

山口裕美著『現代アートの入門の入門』光文社新書 2002年 pp.68-69

 例えば、活きがよいアーティストといった場合、ロンドンではロック的やパンク的な少々行儀の悪いツッパリアーティストも選ぶが、ニューヨークの場合は話題性がある、というニュアンスになってくる。また、偏った展覧会というのはロンドンではキュレーターの個性という意味になるが、ニューヨークでは政治的な事柄が問題になり実現は難しくなる。三つめの巨匠と評価が定まらない人をニューヨークでは逆に差別化して、アメリカンドリームを強調し若いアーティストを叱咤激励する構図を好む。ニューヨークは新しいことをどこよりも先に認めてくれそうな気がするが、実はロンドンの方がアーティストの新しい挑戦を評価してくれる傾向がある。

山口裕美著『現代アートの入門の入門』光文社新書 2002年 p.50

 私はアートを三つのカテゴリーに分けて考えている。このコンセプトはジャーナリストの小倉正史氏から教わったことだ。
 一つは、トラディショナルアート、二つめはオーソライズドアート、三つめはこの二つ以外でコンテンポラリーアート(現代アート)ということになる。
 一つめのトラディショナルアートというのは、伝統的芸術で、歴史的に見てめんめんと続いている表現のことだ。表現のスタイルが踏襲されているもの、といってもいい。この中には岩絵の具や墨を使い、花鳥風月や伝統的物語、名所絶景などを題材に筆で描く日本画や油絵の具で描かれた肖像画や風景がなどの洋画の多くが入る。陶芸や工芸の多くもこちらに含まれるだろう。
 二つめのオーソライズドアートは、権威的芸術で、日展・院展で賞を受賞したり、文化勲章に代表されるような、権威として社会的に認知されているものを指す。また茶道や生け花のように流派を形成し、その流派の中で年功序列的に偉くなってゆくような団体組織を含む。ごく一部の陶芸や工芸もこちらに含まれるだろう。また、日本で六十億円市場であるクリスチャン・ラッセンやシム・シメールなどもこちらに入るかもしれない。誰が認めた権威なのかは不明であるが、「価値がある」という前提で社会的にも名前が流通している。どうにもうやうやしく有り難そうに市場を形成しているのは今もって不思議ではあるが・・・。
 この二つ以外のすべてがコンテンポラリーアートで、いわゆる現代の芸術である。アーティストが生きていようが死んでいようが基本的に関係ない。素材や所属団体も無関係である。その中にはメジャーとマイナーの差はあるだろうが、膨大な数のアーティストがいる。

山口裕美著『現代アートの入門の入門』光文社新書 2002年 pp.25-26

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