DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Tag: art (page 16 of 18)

 金沢21世紀美術館を語る上で欠かせないキーワード、それが「子ども」である。
 私はここを子どもに感動を与える美術館にし、美術を通して子どもたちの想像力を高め、心を豊かにしたいと考えていた。だから、子どもの目線でこの美術館を作ろうと心掛けた。
 子どもは暗いところは嫌いなので明るくする。子どもは、自分と同じ背丈の子どもの姿が見えれば一緒に参加しようと思うから、中が見えるようにする。子どもはガードマンの姿を見ると本能的に萎縮するから、ガードマンは置かない。実際は警備員はちゃんと配置しているのだが、警官のような制服は着せていない。そして、子どもたちが好奇心をかき立てられながら遊べる作品をたくさん用意する。
 こういった配慮の結果、実に多くの子どもたちが遊びにくるようになった。ゲームにばかりうつつをぬかしていると大人が心配する子どもたちが、ここでは羽を伸ばして奇妙な体験に興じている。だから館内は、いつも驚きの声や歓声で満ちている。事務室にいても叫び声や話し声が響いてくる。

蓑豊著『超・美術館革命ー金沢21世紀美術館の挑戦』角川oneテーマ21 2007年 pp.14-15

 現代アート作品は古い街並みと相性が良い。時間は層のように重なった古い建物と現代の先端的な表現を含む作品との対照が観客の感覚を覚醒させる。

(中略)

 これまで文化的な遺産に乏しかった場所に世界中からアーティスト達が招かれ、彼らが地元・十和田の歴史に触れることによって新しい街並みを創出するーーー最も喜んだのは地元の人々であり、特に若い世代である。若い世代にとって、他の地域からの訪問者が増えることは大きな自信になる。駅前商店街のシャッター通りは日本中で大きな問題になっているが、ここ、十和田も例外ではない。しかし、十和田市は現代アートによって変化し始めた。すでに大きな箱モノ美術館がある都市でも、中身のコレクションを変え、企画を変えて美術館自体を大改革すれば、私はこの十和田現代美術館のように美術館が街を再生するプラットフォームになることは可能だと思っている。

山口裕美著『観光アート』光文社新書 2010年 pp.87-88

 全国的に見ると、日本は美術館の数だけは本当に多い。2002年のデータでは、博物館法に則った施設と博物館類似施設を合わせると約5600館もある。それらの多くは70年代以降にできたもの。純然たる美術館はどのうちの3割程度だが、それでも1200以上もある。

(中略)

 欧米では、住民がその土地の芸術や文化、歴史を保存・継承していこうとする熱意が強く、そこに美術館・博物館が中心となって役割・機能を果たしている。日本はこれがまだできていない。
 美術館は、もともと美術作品を中心とした文化遺産や現代の文化的な所産を収集、保存、展示し、それらを元にして教育、普及、研究を行う施設である。だが、日本の場合は博物館法に基づいて博物館の一部を美術館としてしまったため、博物館の機能の中の、過去コレクションを定義、位置づけし、保管するという方向が色濃く出ているのが現状である。
 また、新しいコレクションは美術館とは別組織の収蔵委員会によって決定される。新しいコレクションのための推薦リストが学芸員や美術評論家などから挙がってくると、委員会が多数決でそれらを決めるため、その時代においての評価や適正な予算運営を行いにくい。

(中略)

 また、地方の美術館の多くは自主企画をする予算も気力も薄く、新聞社やテレビ局が企画する展覧会を巡回させることで入場者数を稼ぎ出したいというのが本音になってしまっている。

山口裕美著『観光アート』光文社新書 2010年 pp.58-60

 2009年12月、「外国人観光客の急増にともない、東京都の人気スポットとなっている高尾山(八王子市、標高599メートル)でトイレ不足が深刻化していることを受け、都はトイレの増設のため山頂まで下水道を延伸する方針を決めた。高尾山はミシュラン社の日本版の旅行ガイドで最高の三つ星の評価を受け、外国人観光客が急増、年間250万人が訪れる都内を代表する観光スポットとなった」(産経新聞 2009年12月10日)というニュースが流れた。
 また、「岐阜県高山市に外国人観光客が続々と訪れている。江戸時代の面影を残す古い町並みや高山祭、温泉などの資源を生かし、官民一体となって外国人観光客の誘致に取り組んだ結果、2008年には10年前の約5倍、17万人の外国人観光客が高山を訪れた。特別なテーマパークがあるわけでもなく、世界遺産に登録されたわけでもないが、ミシュランの旅行ガイドで三つ星の最高評価を受けたことも外国人観光客急増の一因である」(J-CAST ニュース 2010年1月11日)という報道もあった。
 高山市の場合、市のウェブサイトの十一カ国語対応など、官民一体となった徹底した受け入れ態勢が外国人客の増加を支えた一番の理由だと思われるが、それにしても、このミシュラン旅行ガイドの外国人観光客集客能力は相当なものだ。

山口裕美著『観光アート』光文社新書 2010年 pp.38-39

 アートの見方のポイントは三つある。
 まず一つめのポイントは「西洋絵画というものは、時間が左から右へ流れる」ということだ。日本国内にある現代アートの作品は、文章にたとえると縦書きではなく横書きなのである。つまり基本的には輸入されたスタイルを踏襲している。よって西洋絵画という言い方をしたが、だいたいの現代アート作品はその傾向にあるが、もちろん例外もあることは頭の隅においていただきたい。

山口裕美著『現代アートの入門の入門』光文社新書 2002年 p.166

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