上野駅: まあ、取り敢えず上野駅である。思うのだけれど JR の駅舎に掲げられた緑色の駅名文字って、見ていると何処となく安心するなあ。特に不案内な土地なんかだと、駅が指標になりますもの。これはやはりがっしりとした太ゴシック体だから良いんだろうな。これが細明朝体なんかだったりしたら不安になりそうだ。それと、壁面に設置された時計が良い。この外観は今後も保って行ってもらいたいものだ。それにしても左側の懸垂幕が邪魔だなあ。ところで、数年前まではは駅周辺に大勢立っていた中東の男達は一体何処へ消えてしまったのだろう。帰国したのだろうか。日本の経済に対する興味が薄れたのか、それとも政治的な理由なのか。
上野恩賜公園を過ぎた辺りの陸橋より: このように、山手線の両側の土地が高台になっている所が多い。逆を言えば電車は谷底を走っているように見える。高台から見下ろす電車の走る姿も、電車の中から見上げる高台の景観も僕は好きだ。そう言えば、ずっと以前にテレビコマーシャル(恐らく JR 東日本の)で、引きの画面の中を山手線の電車がただ通過するだけの映像があった気がする。その光景がもう息を呑むほどに美しかったのだ。
スナック旅館: 線路沿いの住宅が建ち並ぶ道をよちよちと歩いていたら、軒下に浴衣をずらりと干した光景に出会した。よくよく見てみると「お酒とおしゃべりのお店」と看板が出ており、どうやらスナックの類の店であるらしいのだが、ならば浴衣がこんなにも何着も干してあるのは何故なのだろうか。道路側からは伺えないが、この建物は長屋のように奥へ長い構造になっており、そちらに宿泊施設が在るのだろうか。まさか店の主人の毎晩の寝間着だとは思えない。いやそういう人が居てもおかしくはないが、泊まれるスナックだと考えた方が楽しい。呑んで酔っ払ってしまったら、そのままそこに泊まれる。なんと素晴らしい。
線路脇の小径: 人が擦れ違うのがやっとの道幅。それでも結構人が歩いている。抜け道として便利なのだろう。しかし何となく、擦れ違う人々が伏し目がちな気がするのは気のせいか。この道を真っ直ぐ進めば鶯谷駅へ通じると思うのだけれど、ちょっと足を踏み入れにくい区域に入ってしまう。鶯谷駅の北東側にはラブホテル街が在り、知っている人は知っていると思うが、そのホテル街と線路の間の道々にアジア系(たぶん日本・中国・韓国以外)の女達が立っていて道行く男達に声をかけているのである。僕は何年か前に何も知らずにうっかりとその区域に足を踏み入れてしまい、散々声をかけられて困った事があったのだ。その時は夏で、身体の線を強調した衣服を身に纏った彼女達は、僕のむき出された腕に優しく触れてくるのだった。またそういう事になるのだろうから面倒だなあ、と思いつつもその区域に近付いた時、日傘を差した客引きらしき中年の女性と目ががっつりと合ってしまった。彼女の視線は僕にロックオン状態である。僕を客だと100%思っているに違いない。僕は線路沿いを歩く事を諦め、角を右に折れた。
鶯谷駅: これは南側の高台(上野桜木)に在る方の駅舎。北側(根岸)の大通りからは坂道を登った先に在る。普段、自分の肉眼で見るのと違って、瓦屋根と縦縞のテントが印象的な良い佇まいである。写真で見る限りでは峠の茶屋ように見えなくもない。北側の駅舎は、大通りから横道を入って行った突き当たりの更に左に折れた場所に在り、周囲の雰囲気と相まってうらぶれた感じが染みついたナイスな駅舎なのだ。
さて、たった1駅の行程でこれだけ書いてしまうと、残り28駅分の作業を思って気が遠くなる。これでも結構端折ったのだけれど、これ以上減らすと何やってるか判らなくなってしまうからなあ。
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