DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Month: November 2015 (page 2 of 3)

 たとえば欧米の美術市場における芸術作品の必然性には「自分自身のアイデンティティを発見して、制作の動機づけにする」ということがあります。これは欧米の美術における決まりのようなものです。「欧米の美術史および自国の美術史の中でどのあたりの芸術が自分の作品と相対化させられるのかをプレゼンテーションすること」も重要とされています。これをふまえなければ芸術作品として認められないならそうすべきなのです。決まりをふまえた上で斬新なイメージを見せられたら、優良な現代芸術が誕生します。決まりをふまえなければ、欧米ではルール外の「物体」となってしまうのです。「欧米の美術の世界特有のルール」を導入して作品を発表すること。つまり自分自身のアイデンティティを調べなければいけません。大衆芸術である浮世絵や漫画やアニメやゲームの日本美術史の中での関係を把握して、西洋芸術の移植に失敗した日本ならではの出来事にも言及していく。その上で「日本独特の文化体系を欧米美術の文脈に乗せる」という、西洋アート世界との新しい接触をすればよかったのです。

村上隆著『芸術起業論』幻冬舎 2006年 pp.88-89

武田梨奈

 何のテレビ番組だったのか憶えていないが、映画の紹介コーナーでこの予告編(劇場公開前だったのだろう)が流れて、そのハイキックの美しさに呆気にとられた印象がずっと頭の中に残っていた。つまりは、その後映画を観ようともせずに、すぐさま日常の中で忘れてしまっていたのだ。2009年の話である。
 それから、何かのきっかけで何度か思い出した事もあったように思うが、やはりその時も観ようとはしなかった。しかし今年になって、レンタルDVD屋のアクション映画のコーナーで偶然にこの映画のDVDを見つけてしまい、そろそろ観た方が良いような気がしたので、観てみる事にした。果たして、映画全体が稚拙で気に入らなかったのだけれど、主演の武田梨奈の事が妙に気になってしまい、どうにも捨て置けない感じになったので、可能な限り彼女の出演作を観て確認してみようと思い立ったのである。以下はそのメモのようなものである。

ハイキック・ガール!

ハイキック・ガール!:KINENOTE

 2009年5月公開。神社でのハイキックがピークの映画だった。ストーリーは稚拙で、打撃でちゃんと当ててるところを見せようとしたのか、スローモーションを多用するのでスピード感に欠ける上に見づらい。脇の出演者にも格闘家を何人も登用しているそうだが、非常に勿体ない事になっている。監督・脚本・プロデューサーの西冬彦がすべて悪いんじゃないかと思えて来る。

KG カラテガール

KG カラテガール:KINENOTE

 2011年2月公開。今回、西冬彦はアクション監督・脚本・プロデューサーを務めており、監督は木村好克である。前作よりもアクションがぐっと良くなった。しかし、やはり話が面白くない。
 こういう格闘系アクション映画というのは話が面白くなくても成立するものだったかなと、昔に観たカンフー映画の事を思い出そうとしてみたが記憶がかなりあやふやである。しかし先日続けて観てみた「ベスト・キッド」シリーズは、面白かったのは1984年公開の最初のヤツと、2010年にジェイデン・スミスとジャッキー・チェンが主演した作品だけである。他のはどうにも惰性で作った印象を受ける。なので格闘系アクション映画でも脚本はやはり重要だと思う。

女忍 KUNOICHI

女忍 KUNOICHI:KINENOTE

 2011年3月公開。この映画には西冬彦はまったく関係しておらず、監督・脚本・プロデューサーは千葉誠治。これもアクションはそこそこだったが、話が面白くない。65分の映画だし、おそらく物語を見せたいのではなくアクションを見せたいのだろうと思うが、エピソードが残酷なわりには面白みがないし、短い映画で良かったなと思ってしまうほどだった。

少女は異世界で戦った DANGER DOLLS

少女は異世界で戦った DANGER DOLLS:KINENOTE

 2014年9月公開。監督は金子修介アクションは良かったし、話も少し面白い。物語自体もそうなっているのだが、これはアイドル映画として楽しむのが良さそう。

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リュウグウノツカイ:KINENOTE

 2014年8月公開。監督・脚本はウエダアツシ。アメリカで起きた集団妊娠事件を題材にしている話で、アクションはなし。話が面白いことはなかったが、この女優はアクションなしの立ち居振る舞いも結構良いのだな、という印象を持った。

ワカコ酒

ワカコ酒:Wikipedia

 2015年1月から3月に放映。原作はグルメ系漫画。意外なドラマに出演したものである。予告編動画を観て、結構絵面が良かったので観てみた。原作漫画の小気味よさが念頭に在ったからか、全体的に冗長な感じがするし、最後の方は無理矢理話を盛り上げている感じがしたので、あまり面白いとも思えなかった。各話3分という短い尺でやったアニメ版のように、5分、せめて10分の尺でやったら良かったのになあと思っていたら、なんとシーズン2が年明けから放映されるようだし、今月から韓国でリメイク版が放映されるとか。意外にも人気があったようである。

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祖谷物語 おくのひと:KINENOTE

 2014年2月公開。これを最後に持ってきたのは一番気に入っているからである。監督・脚本は蔦哲一朗。3年をかけて、35mmフィルムで撮影したそうである。徳島県三好市祖谷が舞台であり、冒頭で映し出される山深き風景にぐっと引き寄せられ、一転しての冬山の風景の中で蠢く田中泯演じるマタギの姿にがっちり掴まれた。武田梨奈はこういう、俗世から離れて暮らしている純朴な女性の役がよく似合っているように思う。例えば、橋本愛がとても良かったリトル・フォレストだが、もしかしたら武田梨奈が演じても良かったかも知れない、と思ったりする。
 作品に恵まれていなくて不憫だと思っていたが、この作品に主演する事が出来て本当に良かったなあと他人事ながら安心した。

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 Wikipedia の出演作リストを見ると判るように2014年から急に出演作が増えている。レンタルが出来て、主演しているものを観てきたが、デッド寿司は予告編をみて、どう考えても好きじゃなさそうなので止めておいた。そもそもは格闘する少女の姿が観たかったのだったと思うが、その点に関しては今となってはどうでも良くなってきた。今年出演した映画の粗筋なんかを読んでみると、いろいろな役を演じているようである。それらが DVD 化されてレンタルされるようになるのをのんびり待ちながら、緩く追いかけていこうかなと考えている。

 日本人の「芸術」の定義は曖昧なものでした。日本人美術家は独自の見解にいつも自信がなく、作品の根拠も薄く、客観性に乏しく・・・・・・ジャポニズムも結果的には写楽や北斎をハイアートの文脈でカテゴライズしてくれたのはフランス人やイギリス人であり、日本人が写楽や北斎のステイタスを作ったわけではありません。浮世絵に力があったというより欧米の作ってくれた文脈に踊らされたとも言えるのです。

村上隆著『芸術起業論』幻冬舎 2006年 pp.78-79

 ムラカミ・モノグラムをはじめとするルイ・ヴィトンとのコラボレーションは、「ブランドと芸術の融合はいいことである」という扉を開けてしまったようです。
 先日、大規模な予算をかけてリニューアルオープンしたパリのシャンゼリゼ通りのルイ・ヴィトンの本店に行くと、ジェームズ・タレルをはじめ尊敬する芸術家たちがルイ・ヴィトンと組んで店内内装を担当していたのです。
 仮にルイ・ヴィトンを現代の王侯貴族と捉えてみます。ビッグクライアントの下で作品を作ることは肯定しています。「アーティストがファッションブランドと組む」ということは、悪役としてわざと掟を破る行動のはずでしただからこそぼくは躊躇がなさすぎるくらいに破廉恥に本格的にルイ・ヴィトンと組んで結果を出してきたのです。
 ところがそれを欧米の本場の芸術家たちは「アートの文脈」として評価するのではなくて、「ムラカミ、うまくやりやがって。うらやましいなぁ」と捉えていたことがわかったのです。「ブランドと組んでも。ムラカミは芸術家としてのプレステージが下がるどころがオークションで高値を更新している。ルイ・ヴィトンと組むなら、芸術家としてのプレステージは上がっていくんだな。俺もやろう!」芸術家に、金銭の欠如を埋めるための詭弁を作ってあげてしまっただけだったのです。

村上隆著『芸術起業論』幻冬舎 2006年 pp.69-70

 人のできることを極めたお金持ちが「人を超えたい」と願うのは自然のなりゆきです。過去の超人を探索してゆく中で「天才の見た風景」を見たくなるのも、当然の欲求です。天才の痕跡を目前にすることで、現実の限界を突破するヒントも手に入れたいと願う気持ちには切実なものがあります。成功した人が芸術やスポーツに走るのは超人願望関係しているのです。

 (中略)

 壊れた世界で命を燃やさなければいけないお金持ちの「物足りなさ」が芸術に向かいますから、金銭ですべて解決してきたはずの富裕者の見えない欲望を確認するかのように、精神異常者の作品や性的虐待を含む作品が求められる時もあります。

村上隆著『芸術起業論』幻冬舎 2006年 p.55

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