欧米のアートマーケットの基盤には、作家や作品に価値を与えていくアートビジネスの構造があります。これは、アーティストをブランディングしていく上手な仕組みとも言えます。著名な国際展、アートフェア、オークションは、互いに連動しながら一つのサーキットとして成立しています。
例えば、春先にニューヨークで有名なアートフェアが開催された後には、ニューヨークとロンドンで話題の作品が一挙に競り出される注目のオークションが開催され、初夏にはスイスのバーゼル・アートフェアに世界中の一流ギャラリーが集まります。バーゼル・アートフェアのオープニングのすぐ後には、ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア・二年に一度)、ドクメンタ(ドイツ・五年に一度)、ミュンスター彫刻プロジェクト(ドイツ・一〇年に一度)が開催され、秋が近づくとパリのフィアック・アートフェア、ロンドンのフリーズ・アートフェアがあり、その後再びニューヨークとロンドンで大きなオークションが開催されます。そして、冬にはアメリカ東海岸のアート・バーゼル・マイアミビーチが一年を締めくくります。
毎年このような世界的なサーキットに乗って、アートマーケットは巨額の利益を生み出しています。
吉井仁実著『現代アートバブル いま、何が起きているのか』光文社新書 2008年 pp.120-121
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