DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Month: August 2013 (page 2 of 2)

風立ちぬ、を観て。

 世間では賛否両論であるそうな。Twitter の僕のタイムラインで見る限りでは大まかに二種類の人が目立った。様々に検証して問題点を挙げ、それでもなお傑作とする人達。そして、恐らく政治的というか戦争の扱いに対して怒っていて、吐き捨てるように否定する人達。諸手を挙げて賞賛する人は見かけなかった。僕はと言えば、これは何だろうか、と考えてしまうような映画だった。タイムラインで見かけた様々な評価から伺えるような、問題意識を投げかけるようなものには思えなかった。

 そもそもの話をすると、僕は「宮崎駿」の「飛行機物」が好きなのである。「未来少年コナン」に出てくるファルコやギガントに始まり、「風の谷のナウシカ」に出てくるメーヴェガンシップ、「紅の豚」に出てくるサボイアS.21やマッキM.39などなど、20世紀初頭と近未来を混ぜたキメラのような戦闘機を見ただけで心が躍る。そしてそれらのメカニックデザインだけではなく、劇中で戦闘機が空を飛ぶ姿を観るのが好きなのである。ループしたりロールしたりするような曲芸的な飛行だけではなく、ただ直進しているだけの姿でもうっとりする。何故こんなにも良いのか考えても埒が明かないのでその件に関してはただ受け取るだけにしているが、要するに今回もそれを期待して映画館に足を運んだ訳である。その点からすると、少々不満だ。主人公がドイツへ視察に行った際に出てきた大型の爆撃機(たぶんメッサーシュミット Me 323がモデルで、ギガントの名前の由来となった軍用輸送機)には心躍ったが、他はガルウィングの九試単座戦闘機の飛行シーンが良かったくらいか。零式艦上戦闘機はほとんど出てこない。
 該当する資料が見つからないので僕の記憶違いかも知れないが、「スカイクロラ」を発表した押井守が宮崎駿に対して「この映画の戦闘飛行シーン良いでしょう」という感じで自慢気に話しているのを何処かで読んだ気がする。その言葉に応えるように気合いを入れてくるのかと期待していたが、そういう事もなさそうだ。残念である。

 そう言えば、「主人公二郎は一見優しげだが、その実は薄情で矛盾に満ちた人間である。そしてそれは宮崎駿のさらけ出された本性だ」というような事を書いている人も多かったが、そんな殊更に話題にするほど酷かったかなぁと思う。あくまでも自分の欲望や欲求に素直に従うが為に家族やら友人やらを顧みない人物なんて、これまでに色々な作品の中に現されているし、実人生に於いても割とそこら辺にも居たりするのに、そんなに騒ぐほどの事でもないのではないかと思うんだけど、もしかしたら、これまでの宮崎作品からするとあり得ない人物像だとかそういう理由なのだろうか。もしそうだとしたら随分狭い世界での話だと思うが、それが評価の基準なのだろうか。よく解らない。
 冒頭に「これは何だろうか、と考えてしまう」と書いたのは、この辺りの矛盾を描こうとしたにしても中途半端であるように思えたし、戦争を描きたい訳ではないという理由だろうか、第二次世界大戦に関しては直前でばっさり切り落としてしまっているが、観ている側からすれば描かない事に対する疑問が頭を占めてしまうので肩透かしを食らった印象が強い。前半は良く出来ていて、これらの事は後半に出てくるので、全体としては失敗しているように感じるのだ。或る人は「自分が観たいものだけをやりたいようにやった結果」だと書いていた。そうなのだろうか。もっとやりようが在ったように思えるので、どうも釈然としない。それに僕が気づいていないだけで、本当は何かが潜んでいるのではないかと考えてしまって気になるのだ。何れの日にか、僕はこの映画をまた観る事になるだろうし、その時にはもっと好きになるような気はしている。

 金沢21世紀美術館を語る上で欠かせないキーワード、それが「子ども」である。
 私はここを子どもに感動を与える美術館にし、美術を通して子どもたちの想像力を高め、心を豊かにしたいと考えていた。だから、子どもの目線でこの美術館を作ろうと心掛けた。
 子どもは暗いところは嫌いなので明るくする。子どもは、自分と同じ背丈の子どもの姿が見えれば一緒に参加しようと思うから、中が見えるようにする。子どもはガードマンの姿を見ると本能的に萎縮するから、ガードマンは置かない。実際は警備員はちゃんと配置しているのだが、警官のような制服は着せていない。そして、子どもたちが好奇心をかき立てられながら遊べる作品をたくさん用意する。
 こういった配慮の結果、実に多くの子どもたちが遊びにくるようになった。ゲームにばかりうつつをぬかしていると大人が心配する子どもたちが、ここでは羽を伸ばして奇妙な体験に興じている。だから館内は、いつも驚きの声や歓声で満ちている。事務室にいても叫び声や話し声が響いてくる。

蓑豊著『超・美術館革命ー金沢21世紀美術館の挑戦』角川oneテーマ21 2007年 pp.14-15

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