DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Month: October 2010

凡河内躬恒

 平安時代前期の歌人。百人一首にも収められている一首。

心あてに折らばや折らむ初霜の おきまどはせる白菊の花

 まあ、パッと見てもよく意味は解らないんだけど、WEB 上でいろんな人の現代語訳を読んでみると、だいたいこんな感じ。

 初霜が降りて真っ白な庭に、見分けがつかないほど白い菊の花を探して、あてずっぽうに手を差し伸べて折ってみようか。

 これは単に訳しただけなんだけど、意味らしい意味なんてないんじゃないかという気がする。言い換えれば、そんな事を求めては詠んでいない気がする。下の降りた庭と、白菊の白さにただただ感嘆しているのじゃないだろうか。見分けが付かないのに手を出すなんてちょっと馬鹿げた行動だけど、そんな子供染みた事をしてしまう程にその白さは美しかったと。あ、こういう意味なのか。

木枯らし一号

 昨夜木枯らしが吹いたそうだ。木枯らしの定義は Wikipedia に拠れば以下の通り。

木枯らし(こがらし)とは日本の太平洋側地域において晩秋から初冬の間に吹く風速 8m/s 以上の北寄り(北から西北西)の風のことで、冬型の気圧配置になったことを示す現象である。凩とも表記する。

 記憶を辿ってもこれが予報された事はなかったと思うので、大体いつも前触れもなくこの寒風が我が身を襲う事になる。室内に居れば何という事はないのだが、希に外を歩いている時に吹かれる。これはもう僕にとっては自然に身を晒す事の恐ろしさを体感する年に一度の地獄のようなものである。実際にはもっと気温が低かったり風が強かったりする日は後日いくらでもあるのだが、木枯らしに吹かれる事以上の苦痛はない。何処か別な氷の世界から吹き込む異様の現象である。誰かと一緒に居るのならまだしも、独りで吹かれると死にたくなってくる。こんな辛い思いをするくらいなら、という感じで。

 その日から僕は暖かさを獲得する事ばかり考えるようになる。あらゆる場面で。そして急激に生活習慣を変える事を強いられる。非常に迷惑極まりない事ではあるが、どうしようもない。

 大袈裟に言えば、越冬の覚悟を日々強要される、陰鬱な日常の始まりの日なのである。

詠歌

秋の夜の冷たき雨に誘われて 在りし迷いの花をば掴む

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