シングルで持っていたのだが最近アルバムで買い直した。最初は確かラジオから流れてきたのを聴いて、一発で気に入って買ったのだと思う。全編に渡ってベースがぶりぶりと走っているが、その他の音は割と単調である。タイトルも、アレンジも、ともすれば陳腐に聞こえる歌詞も、野宮真貴の声も、どれをとってもフラットでニュートラルな印象を受ける。それだからこそ聴く人が気持ちを乗せやすいのかも知れない。少し間延びして聞こえるホーンは、本当にある晴れた日の朝にぼんやりと、そしてふいに口ずさんだかのように印象づける。
で、音楽的な事から少し話がずれる。この事が全てに当てはまる訳ではないのだけれど、誰かとの終わりを決めるのは本当にこんな瞬間だなあ、と思う。決断と呼べる程の確固とした意志は持っていないし、何かしら事件が起きた訳でもない。でもある時そう感じてしまったらそれはもう動かし難い現実なのだ。勿論それまでの様々な蓄積あってこその話だけど、飽和し溢れてしまった思いはどうする事も出来ない。やがて自分の中で風化していくその人をいつまで見届けるのか。それとも早々に別れを告げ別な道を歩むか。未来はとてつもなく限られている。
そんな唐突な終演を演じなければならない悲しさと、その後も淡々とした日常が当たり前のように続いてしまう乾いた悲しさ。だからこその「悲しい歌」(アルバム収録時には Triste と改名されている)なのだろうな、と思う。「ごめんね。いつの日かみんな忘れるはず」とはお互いにとっての最上の救いである。それ以外にこの悲しみから逃れる道はない。この歌の中で意志が感じられるとしたらこの部分のみである。いい加減な責任放棄のように聞こえるかも知れないが、他の一体何処に救いが在るだろうか。
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