その昔、頻繁に人に自分が好きな曲を薦めていた頃「日本語じゃないの?」とか「私こういうウィスパーボイス駄目なのよ。」とか、果ては「よくわからん。」とか「暗い。」とか、もう色んな言葉でダメ出しをくらう訳なのだが、その中で「眠くなる。」というのがよくあった。そりゃあまあ、皆10代半ばから20代初めくらいの年齢であったので、つまりその年齢の連中というのは男も女も、自分を興奮させてくれるものにしか興味を示さない傾向があるので仕方のない事なのだけれど。そう言えば若干一名、そういうのを好む奴が居たんだけど、そいつとは高校から別になってしまっていた。
僕が未だ福岡の大学に通っている頃、福岡天神にある天神コアという商業ビルの7階に当時在ったライヴハウスに SION が巡業に来た。アコースティックギター一本で弾き語るツアーで、開催時が丁度12月だった為かアンコールで客達は「12月」を所望した。リクエストに応え彼は「では、12月、聴いてください。眠りたい人は、寝てください。」と言って歌い始めたのであるが、僕はその時初めて、音楽を聴きながら眠くなるというのは決しておかしな事ではなく、場合によっては人が眠る為の音楽が存在しても良いのだという事を確信した。後年、 J. S. Bach が不眠症のパトロンの為に作曲したゴールドベルグ変奏曲の存在を知って更に安堵した。ま、個人的にはこの曲では眠れないんだけどね。
僕はいつも眠い、昔からずっと。20歳くらいの頃に不眠症になりとても辛い時期を過ごした経験から、僕は余程の事でもない限り眠る事を何よりも優先させる。治らない飲酒癖もその頃からの習慣だ。
そして35歳を越えた頃から、夜眠る前に派手な音楽(やたらと高音が効いているやつとか、ビートが早いヤツとか)を聴きたいとは余り思えなくなった。洋楽でも邦楽でも、歌物でも器楽曲でも、どんなジャンルの音楽でもそれは関係ない。夜にそぐわない音は違和感しか感じない。細かい事を言えば、極度に疲れている場合は事情が少し違ってくる。一度興奮状態に持っていかないと眠れない。
さて、またしても前置きが無駄に長くなったが、僕の最初の「マイ・フェイバリット・テープ@WEB」は心地良く眠る為の楽曲集である。これだけ書いておいて何だが、僕の思い入れなどとは関係なく、それぞれにお楽しみ下さい。
Moss and Sleeping Drag from doggylife on 8tracks Radio.
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