DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Author: doggylife (page 39 of 193)

 特に物理的存在である作品と身体とが出会う経験においては、身体知とでも呼べる総合的な知性のありかたが重要となる。視覚芸術は、音楽、演劇、舞踏などと異なり、意味・記号的言語と、作品の存在論的言語とが複雑な層となって構成されている。それは、文節可能な世界とそうでない世界の境界にまたがって存在する。アート作品には分析が困難な、異なったレベルの抽象化がなされており、それには感情にコミットし、かつ偶然、予測不可能性、超現実といった想像力の分野に関わっているからだ。この不確実な、怪しい、底の知れないソフトウェアを伝達することは、ギャンブルに近い。挑戦的な仕事といえる。

長谷川祐子著『キュレーションー知と感性を揺さぶる力』集英社新書 2013年 pp.11-12

 いい作品はどう判断するのかと、よく聞かれることがある。長いこと記憶に残っている作品と答えることが多いが、では若い作家の作品を最初に見たとき、その場でどう判断するのか。それは、その作品が視覚の中に「到来する」「侵入してくる」という以外には表現のしようがない。それは、視覚的インパクトという表現ではすまない何かなのである。こちらの視覚的記憶の蓄積とそのたびごとに積み重ねてきた解釈や判断の集積により、経験あるキュレーターの眼はたえず既視感にさらされている。その既視感ブロックを破って侵入してくる作品は、そこだけモノクロから総天然色になったときのような新鮮さがある。

長谷川祐子著『キュレーションー知と感性を揺さぶる力』集英社新書 2013年 pp.4-5

20年越しの岡村靖幸

 先日、岡村靖幸のライブをゼップ福岡で観た。友人に誘われて行ったのだが、実は20年ほど前にも、同じ友人と千葉のNKホールで岡村氏のライブを観ている。はっきりした年が思い出せないので検索してみると、1992年と2004年にNKホールで行った記事が出てくるが、2004年だと僕は30代になっているので明らかに違うし、1992年だと僕が上京した年なのでそれも違うような気がする。もう一二年後だったと思うのだけれど、気のせいかも知れない。いずれにせよ、約20年前の話だ。この施設は2005年に閉鎖されているが、たしかディズニーランドの近くに在ったと思う。不慣れな上に、そんな場所まで行くのが面倒だなと思っていたのを憶えている。ライブ自体は結構楽しんだと思う。アリーナ席に陣取るのは殆どが女性で、男共は遠巻きに眺めているような感じであった。そしてステージの上に、精子を模ったと思われる銀色のオブジェが吊り下げられていて、やっぱり変な人だなあと思っていた。

 さて、それから三度、覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕されるなどという波瀾万丈の人生を経た岡村氏と再び遭遇する事になったのだが、果たして、全体の印象を述べるなら、氏は相変わらずだった。アルバムを出さないので、演奏する曲は近年に出したシングル数曲を除いては以前と変わりはないし、氏自身の見せ方も変わりはないし、時折差し入れてくる台詞もそのままであるように思う。ただ、やはり氏も歳を取った。もう49歳である。最近のスタイルである眼鏡を掛けたスーツ姿は以前に比べるとずっとまともに見えるし、身体を俊敏に動かせないのでダンスが緩慢で、以前は MC が多かったように思うが今回は殆ど喋らなかった。20年前に観た時の曲のアレンジがどうであったか憶えていないが、おそらくより複雑で多様になっているような気がする。しかしモニターの音がやけに大きくて、途中まで結構ツラかった。ライブなんてものに足を運ぶのが数年振りなので、大音量に慣れないだけだろうと思っていたが、後日同行した友人にその話をすると彼も同じように感じていたらしく、しかも彼曰く「いつもそう」だそうな。友人は20年振りの僕と違い、何度も岡村氏のライブに足を運んでいる。何故あんなに音を大きくするのだろう。不思議だ。世の中の人々はそんなにも強い刺激に飢えているのだろうか。僕は、自分が歳を取ったからそう感じるのかとも考えたが、演奏者が同年代だし、観客もそうだ。これはシネコンで映画を観る際にも同じような事を感じるのだが、詳しく述べると長くなるので他日に譲る。

 途中の MC(岡村氏は喋らない。喋るのはマニピュレーターの人)で年齢の話になって、「40代の人手を挙げて」という呼びかけに、1諧アリーナ席の大半の人が手を挙げた。僕の見る限りでは、その7割は女性で、僕が座っていた2階席にしても同じようなものだったと思う。恐らく20代の頃からずっと通ってる人達なのだろうな。中にはツアーを最初から追いかけている人も居るようだ。決まった振りがある訳ではなさそうだが、合いの手やコーラスなど一挙手一投足が全曲に於いて揃ってるし、お行儀が良い。客層がほぼ固定しているのかも知れない。嫌な言い方をするが、その光景の中に身を置いていると、どことなく閉鎖的な雰囲気を感じていささか居心地の悪さを感じた。まあ、気のせいかも知れない。キャリアの長いミュージシャン、しかも寡作とくれば、本当に好きな人しか観に行かないだろうし、同年代のファンならば共に成長してきたという気持ちもあるだろう。昔からのファンが、毎年(塀の中に入っていなければ)一度、頑張って生きてる岡村氏と相見える為にコンサートホールに足を運んでいる。たぶんそんな感じで、きっとそれで良いのだろう。

 以下に近年リリースされたシングル曲を並べる。結構良い曲出してるなあ。

Just how to Annotate Articles

Postcolonial African Literature Article – Essays Postcolonial African Literature African literature published while in the postcolonial period by experts of African descent. General to the time between 1970 and 1960, during which occasion many African countries gained political freedom rulers are referred in by postcolonialism in Africa. Several experts publishing even, and during this time during colonial situations, found themselves as political activists and both artists, and their works resembled their issues about their countries’ political and cultural problems. Continue reading

午睡のための音楽

Green Sleeves

Sinfonia

Transformations

 ずっと昔、渋谷のタワーレコードだったと思うが、立ち寄ったクラシックのコーナーで村治佳織の「パストラル」が推されていた。「美少女ギタリスト」だとかそういうノリのポップが貼られていたと思う。ふうん、と思ったのみでその時はその場を通り過ぎたのだが、後からどうにも気になってその棚へ戻った。その頃の僕にとってギター曲と言えば、バッハのリュート組曲目当てで買ったジョン・ウィリアムズのアルバム一枚を聴いた事があるくらいでほぼ何も知らなかったので、楽曲としては興味の持ちようがなかったにも関わらずその CD が気になってしまったのは、村治佳織の容姿が良かったからだろうか。結局僕はそのアルバムをジャケ買いした。
 部屋に戻って聴いてみると、悪くはないと思った。それから後、そう頻繁にではないけれども、時折思い出したようにこのアルバムを聴くようになった。意気込んで聴くようなものではないが、部屋の中に流しておく音楽としては適切なであるように思えたので、主にそういう用途で流した。そしてその内に、部屋を満たしておくにはアルバム一枚では足りないと思うようになり、時を遡ってデビューアルバムから順に少しずつ揃えていったのだけれど、3枚目のアルバム「シンフォニア」の「オンブラ・マイ・フ」を聴いた時にふと思い付いた。これは午睡のための音楽であると。明るい陽差しを遮った屋根の下で、涼しげな風に撫でられながら眠りに落ちる自分の姿を夢想した。沈み込むような感じではなく、自分の身体を軽くして横たわっている事が出来るような魅惑的な眠りだ。そしてその季節は五月が良かろうと思われる。まだ強すぎない陽差しに目を細め、爽やかな薫風を吸い込み、年に何度もない最良の気候の日に聴くのが良かろうと思われる。

 村治佳織のアルバムを全て持っている訳ではないが、自分が所有する中で午睡に最も適しているであろうアルバムを上に挙げた。曲単位ではもっと在るのだけれど、アルバムを通して聴きながら微睡むには少々邪魔になるような曲が混じっていたりするので、そういうアルバムは省いた。音階の高低差が少なく、溜めや抑揚が控えめで、淡々とした演奏を選んだ。
 ボリュームを絞り、窓を開け放ち、揺れるカーテンの影に隠れるように身を横たえて聴く音楽である。

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