DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Author: doggylife (page 35 of 193)

 この本の最初で現代アートについて私は「人々がお互いの違いを認識し、共存していくためのヒントまたはツール」であり、そこにはアーティストが、自らの生まれ、育った国または地域の文化や歴史、宗教、政治、風俗等と、他者あるいは世界との関係性が様々な形で表されていると申し上げました。
 さらに、同時代性、社会性を備えてもいない、あるいは関係性が希薄な作品は、ただ単に現在制作されただけの「現在アート」であるとも。

宮津大輔著『現代アートを買おう!』集英社新書 2010年 p.191

 私は必ずパーティー用にコムデギャルソン・オム・プリュスのジャケットと、日本の若手デザイナーによるシャツやズボン(予算の関係でユニクロの場合もあります)、そして黒のパテントやゴールドの派手なスニーカーをスーツケースに入れていきます。海外のパーティーで、東洋人の私が大胆なデザインのジャケットを着ていると、向こうから「素敵なジャケットね。それはコムデギャルソン?」と必ず数人は話しかけてくれます。
 最近は余裕があれば亡き父形見の和服を着ることもありますが、外国人から見たインパクトの強さと、固有の文化に対する憧れや尊敬といった意味では、コムデギャルソン・オム・プリュスの服は、和服と同様の効果を持っているといえます。サラリーマンの給与からすれば決して安い買い物ではありませんが、アート作品のようにオリジナリティに溢れ美しく、海外のパーティーで話のきっかけになることを考えれば、決して高くないと思っています。
 また肌寒い季節なら、マフラーの代わりに絞りの子供用帯揚げを首に巻いていきます。褒めてくれたギャラリー・オーナーや仲良くしたいアーティストには、帰国後鳩居堂や榛原で手に入れた千代紙の文箱に入れて、サンクス・レターと共に贈っています。
 ちょっとした心遣いや、自国の文化をさりげなく身に着けることは、知り合いがいない異国でのパーティーを楽しむコツです。是非試してみて下さい。

宮津大輔著『現代アートを買おう!』集英社新書 2010年 pp.82-83

 買わなければ。手元において理解し尽くさなければ。内なる声がそう告げたような気がして、「カチッ」とスイッチが入ったような気さえしました。この時の草間作品との出会いがなければ、私は現代アートをコレクションすることはなかったと思います。
 当時もそして今も、彼女の作品は私にとってアートという枠組みを超えて、今まで見たこと、感じたことのないものを体験させてくれる特別な存在なのです。

宮津大輔著『現代アートを買おう!』集英社新書 2010年 p.21

 美術館インフラや美術教育制度が発達していない国ではいま富裕な個人コレクターが個人美術館や財団をつくる傾向がある。彼らのコレクションはアーティファクトと呼ばれる歴史的・考古学的産物から植民地時代の絵画、二十世紀の近代絵画・現代アートまで幅広く及ぶ。そしてローカルに徹底することで、そこから入手できる最も質の高いものを収集していることが多い。彼らの美学やローカルの文化史に関する個人的視点と知識により、それらは歴史的な一貫性をもって示される。例えば私が調査した範囲では、インド、フィリピン、マレーシア、ブラジル、アルゼンチンなどで国立美術館よりはるかに質の高いコレクションを個人コレクターが所有している。

長谷川祐子著『キュレーションー知と感性を揺さぶる力』集英社新書 2013年 p.171

 二〇一三年現在、経済はBRICsの台頭に示されるように、アジア、南米の活性化が著しい。例えば不況のスペインからブラジル人やアルゼンチン人が引き揚げるだけでなく、スペインの若者たちが南米に職を求めて移動を始めている。この逆行は文化的なイニシアティヴの転倒につながる。つまりスペイン人の移民は、ビジネスのためにブラジルのローカルの文化を学ばねばならないのだ。それはグローバル企業のマーケティング・リサーチとは異なるレベルとなる。
 この移動の図にはかつての宗主国と植民地の関係によって形成された言語的・文化的なネットワークが関わっている。

長谷川祐子著『キュレーションー知と感性を揺さぶる力』集英社新書 2013年 p.166

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